"ideal"という単語は、それ自体は「理想」という意味の単語であるが、それだけでは社名の由来を説明することはできない。その説明には、私の本分たる数学に関する多少の知識を要する。


　19世紀、Fermat予想に関する研究をしていた数学者Kummerは、その過程で整数の拡張を行おうとしたが、その拡張によっては素因数分解の一意性が崩れてしまうことに気がついた。整数論の基本定理を崩してしまうことは、当然整数論にとっては致命的であり、このままにしておくわけにはいかなかった。そこで、Kummerは素数をさらに分解するために、存在はしない理想的な数、すなわち"ideal"を導入してこの問題を解決した。


　この、言わば"完備性のために理想的な存在を導入する"という考え方こそが、私がこの社名をつけた所以である。つまり、挨拶にもあるように、社会を変革せんと文章を書こうとも、経済原理の制約下では日の目を見ることなく終わってしまいうる。その制約を取り払い、今まで日の光を浴びなかったような文章が、世に羽ばたいていく助けになるような存在に、この会社をしていきたい。この社名はそのような想いを背負っている。そして、この"ideal"という会社が、その想いを大成するように日々邁進することを、私はこの名に誓う。

株式会社ideal　代表取締役　　富田　一彦